歴史ある最高の栄誉「パリ大賞典」開幕迫る 凱旋門賞と同舞台で行われる3歳限定戦に注目
今年から「サイゲームス」が冠スポンサーに
今週の日曜日(13日)、パリ近郊のパリロンシャン競馬場を舞台に、フランスにおける伝統の3歳戦G1・パリ大賞典(芝2400m)が行われるが、今年はレース史上初めて、日本のエンターテインメント企業の株式会社サイゲームスが冠スポンサーとなり、「サイゲームス・パリ大賞典」として施行される。
ご存知「ウマ娘」の開発・製造元として知られるサイゲームスは、昨年秋、米国のブリーダーズカップ協会とパートナーシップ契約を結び、G1・BCスプリントの冠スポンサーに就任。今年春には同じく米国のチャーチルダウンズ社と契約を結び、G1・ケンタッキーダービー前日のアンブライドルドシドニーSを後援。同時に、内馬場にブースを出展しゲームの試遊を行った。
そして、今回の舞台となるフランスは、アメリカに比べればアニメをはじめとした日本のポップカルチャーの浸透度が進んでいる国だけに、満を持してのヨーロッパ進出といったところだろう。
当日のプログラムでは、メイン競走のパリ大賞典だけでなく、第1競走に組まれた古馬のハンデ戦や、第3競走に組まれた3歳牝馬のG2・マルレ賞も、サイゲームスが冠スポンサーとなる予定だ。また、近年のパリ大賞典は、全レース終了後の競馬場が「ガーデンパーティー」の会場となるのが恒例で、人気ラッパーによるパフォーマンスなどが予定されている中、ここでも何らかの形でサイゲームスがフォーカスされる可能性がありそうだ。
今から遡ること162年前の1863年、フランスにおける初めての国際競走として創設されたのがパリ大賞典だ。以降、フランスにおける最高の栄誉として施行されていたのが、距離3000mで争われていたこのレースだった。
創設から3年目の1865年、英国ダービーを制した初めての外国産馬という名誉を手にしたグラディアトゥールが、パリ大賞典に凱旋出走した際には、ロンシャンのスタンドは15万人の大観衆であふれかえり、我らが英雄であるグラディアトゥールが8馬身差で快勝すると、場内が割れんばかりの拍手と喝さいに包まれた光景は馬も、フランス競馬史に残る名場面と言われている。
パリ大賞典から57年後に凱旋門賞が創設されると、「フランス競馬の最高峰」の称号は譲ることになったが、それでもなお、フランスにおける重要な基幹競走であることに変わりはない。
ことに、フランス版ダービーのジョッケクルブ賞の距離が、2400mから2100mに短縮された2005年以降は、凱旋門賞と同じ競馬場の同じ距離で行われるパリ大賞典こそ、凱旋門賞に向かう王道になる一戦と位置付けられることになった。
しかし実際には、パリ大賞典と凱旋門賞を同一年度に連覇した馬は、2006年のレイルリンクを最後に現れていない。残念ながら、この原稿を書いている段階で、パリ大賞典の出走馬は未確定だが、この馬が出てきて、よい競馬が出来れば、秋が楽しみになるなという3歳馬は複数いる。
例えば、ヤン・バルベロ厩舎のラファールデザイン(牡3、父スタースパングルドバナー)。祖母がベルモントパーク競馬場のG1・メイトロンS(d8F)勝ち馬センスオブスタイルという血統背景を持つ同馬。2歳11月にドーヴィル競馬場の条件戦(AW1900m)を制しデビュー2戦目で初勝利をあげると、続くドーヴィル競馬場の条件戦(AW1900m)も連勝して2歳シーズンを終了。3歳2戦目となったロンシャン競馬場のG3・オカール賞(芝2200m)を制し重賞初制覇を果たすと、6月15日にシャンティイ競馬場で行われたG3・リス賞(芝2400m)も制し、重賞連勝を果たした。その翌日(16日)、ロンドンセールに上場されるも、200万ポンドで主取りに終わった。
あるいは、アガ・カーンスタッドの自家生産馬ダリズ(牡3、父シーザスターズ)。母がG1・香港ヴァーズ(芝2400m)勝ち馬ダリヤカーナで、G1・ガネイ賞(芝2100m)勝ち馬ダイヤンをはじめ、兄姉に3頭の重賞勝ち馬がいるという良血馬ダリーズは、F.グラファード厩舎から今年5月にデビュー。ロンシャン競馬場でメイドン(芝2100m)、条件戦(芝2000m)、LRリッジウェイS(芝2000m)を3連勝した後、6月29日にサンクルー競馬場で行われたG2・ウジェーヌアダム賞(芝2000m)を制し、無敗の4連勝で重賞初制覇を果たした。前走からは中1週という厳しいローテーションになるため、狙いは8月のG1インターナショナルSとも言われているが、血統背景からも2400m路線に矛先を向けて不思議ではない馬である。
残念ながら日本での生中継はない13日のパリ大賞典だが、日本の皆様にもぜひご注目いただきたい。