
▲ずらっと並ぶピカピカの馬運車たち(C)netkeiba
『with佑』番外編として、佑介騎手が競馬開催に欠かせない重要な役割を担う鷹野運送株式会社の代表取締役・鷹野衛さんにお話を伺う企画をお届けしています。今回の話題は「物流の2024年問題」。
ドライバーの時間外労働時間の上限の制限、そして若い世代の乗り物への興味の薄さ…。そんな要因から減ってきている人材。そんな状況で、競走馬たちを運ぶ長距離輸送は今後も継続していけるのか? いま、馬運車業界が抱えている悩ましい問題の核心に迫ります。
(構成=不破由妃子)
働き方改革による残業時間の制限…馬運車限定の特殊なルールが
佑介 ドライバー不足とも無関係ではないと思うのですが、やはり今日お聞きしたかったのが「物流の2024年問題」。2024年の4月から施行されたルールですが、改めてその内容や課題などを教えていただけますか?
鷹野 働き方改革法案により、ドライバーの時間外労働時間の上限が年間960時間に制限されたんです。となると当然、ドライバーさん一人当たりの走行距離も制限されてしまう。ドライバーさんが動けなくなるということは、そのぶん人員を補充しなければいけないから、それに対するコストが掛かってきますし、月の残業が60時間を超えた場合、残業代を50%以上割り増しして払わなければならないというのもあります。つまり、おのずとコストの上昇に繋がってくるんですよね。
佑介 以前はそういった制限がなかったんですか?
鷹野 それほど大きな上限規制はなかったんです。だから、一般貨物輸送のドライバーさんも含めて、ドライバー業、運輸業はお金になる、稼げるお仕事という印象が強かった。でも、上限が定められたことで、今は稼げないという印象のほうが強くなって、ドライバー不足に拍車をかけたところはあります。そもそも、我々の世代に比べると、今の若い方たちは乗り物への興味が希薄ですしね。
佑介 確かにそうですね。車を持つ、車に乗ることが当たり前ではなくなってきている。
鷹野 そのふたつを含めて、ドライバーさんが減ってきているのは事実です。ただ、ゼロではないので、いかにそのなかから人員を確保していくかがこれからの課題になってくると思います。いずれにせよ、募集、雇用、教育と、お金が掛かってくるのは間違いない。
佑介 会社自体の体力がないと、事業を継続していくことが難しい時代になりそうですね。ちなみに、馬運車の運転手さんも年間960時間という上限は一緒ですか?
鷹野 基本的には一緒です。ただし、特殊なルールもあります。これは昔からそうなんですけど、厩舎スタッフの方が乗るスペースの2階部分にベッドが備え付けられているんです。そのベッドがあることで、実は上限規制プラスαが認められていて。

▲運転席と馬スペースとの間にある空間。ここに厩務員さんが乗って、仮眠をとったりするそう(C)netkeiba