上がり3ハロンはハイレベルのスプリンター並み
天皇賞(秋)を制したドウデュース(撮影:下野雄規)
にわかには信じがたい爆発力で、5歳ドウデュース(父ハーツクライ)が東京2000mの天皇賞(秋)を差し切った。
予測されたように前半はスローで1000m通過は「59秒9」。それなのに勝ち時計は「1分57秒3」。レースの後半1000mは「57秒4」の高速決着だった。
武豊騎手のドウデュースは、前半1000m通過地点では後方2番手。リプレイを見てなので誤差は承知だが、ドウデュースの1000m通過は62秒0前後と推定される。するとドウデュースは、後半の1000mをなんと「55秒3前後」で乗り切ったことになる。
さらに上がり3ハロンは、新潟直線1000mのハイレベルのスプリンター並みの「32秒5」となった。2022年の天皇賞(秋)で、大きく離して逃げたパンサラッサを捕らえたイクイノックスの上がりが32秒7の記録がある。全体のペースも、位置取りも異なるので比較しても意味はないが、ドウデュースの爆発的な末脚は、改めてイクイノックスとほぼ互角だったことになる。
この点は偶然ではないだろう。2022年の日本ダービー2400mをレースレコードの「2分21秒9」。クビ差の同タイムでゴールしたドウデュースとイクイノックスの後半3ハロンは、ほとんど同じ「33秒7と33秒6」だった。
ドウデュースは、その日本ダービーも、京都記念も、有馬記念も、武豊騎手とのコンビで後方からのスパートを決めた「差し=追い込み」タイプ。通算[7-1-1-6]の成績は、連戦連勝のチャンピオンのそれではないが、1600m、今回の2000m、2400m、そして2500mで4年連続のGI制覇。今後の出走予定は「ジャパンC→有馬記念」と連続するが、ぜひ、今回と同じような素晴らしいデキで、プラン通りの調教をこなした完調に近い状態でビッグレースに挑戦したい。
2着したタスティエーラ(父サトノクラウン)、3着ホウオウビスケッツ(父マインドユアビスケッツ)、さらには小差6着ベラジオオペラ(父ロードカナロア)、7着ソールオリエンス(父キタサンブラック)、8着レーベンスティール(父リアルスティール)はみんな4歳牡馬。あまりレベルの高い世代ではないとされることが珍しくないが、このスローだった流れの東京2000mをみんな「1分57秒5-8」で乗り切り、見せ場を作ったのだから立派なものだ。秘める能力は決して低レベルではない。
とくにタスティエーラは馬体が大きく、たくましく成長してきた。松山弘平騎手の好騎乗もあり、2000m級のスピードレースがもっとも合うことを改めて示した。
スローの逃げとはいえ、あわやのシーンを作ったホウオウビスケッツはまだまだ強くなる。キャリアの浅さと外枠が響いて最初からスムーズな追走にならなかったレーベンスティールは、今回の苦い経験が大きな糧となるはずだ。
4着に突っ込んだ5歳ジャスティンパレス(父ディープインパクト)は、昨年とはまったく異なる流れになり、残念ながら馬群に詰まってしまった。ただし、ゴール前の鋭さはさすが。昨年の2着馬らしい底力は見せた。
失速して13着の1番人気リバティアイランド(父ドゥラメンテ)は、昨年のジャパンC時との比較でプラス22キロの馬体重。まだキャリアは浅く、どんな印象を与える完成された馬体になるのかわからないが、プラス18キロだった菊花賞のダノンデサイルと同じく、今回に限れば、ちょっと立派すぎる体つきではないかと映った。故障ではないと思えるが、急に失速してしまった。