展開向かずのダノンデサイルも今後に期待
菊花賞を制したアーバンシック(c)netkeiba
またまたC.ルメール騎手の絶妙な騎乗が決まった。秋の中央開催が始まって7週間。チェルヴィニアのGI秋華賞、そしてアーバンシック(父スワーヴリチャード)のGI菊花賞を含め、約1カ月半にJRA重賞「7勝目」となった。
最近10年、C.ルメール騎手の菊花賞は【4-2-1-2】でもある。今年は前走で騎乗していた馬が4頭も揃ったが、選んだ2番人気アーバンシックの危なげない快勝だった。
今年の菊花賞3000m。3等分した1000mごとのバランスは「62秒0️-61秒7-60秒4」=3分04秒1。まず例外の年はなく中盤1000mのペースが緩むのがパターンであり、後半1000mのスパートになるのがいつもの菊花賞3000mだが、最初にハナを切ったエコロヴァルツ(父ブラックタイド)が「ペースを落としすぎた(岩田康誠騎手)」と振り返ったように前半は予測以上のスローだった。
その結果、先頭が2度3度と入れ替わる珍しい展開になり、中盤の1000mのペースは落ちず、しだいしだいにペースが上がるきわめて珍しい流れの菊花賞になった。
アーバンシックは前半のスタミナロスを最小限にとどめるため、中団の後方に位置して動く気配なし。この時点では1番人気のダノンデサイル(父エピファネイア)を視界に入れるポジション。早くから前半スローの流れを察知していた武豊騎手のアドマイヤテラ(父レイデオロ)が、2周目の3コーナー手前から抜群の手応えで外から動いたのを待っていたかのようにスパート開始。
直線は大事に外に出し、セントライト記念と同じように直線の中ほどで鋭く抜け出した。2馬身半差は完勝としていい。3歳初期の若さを解消し、心身ともに著しく成長したアーバンシックの真価を100パーセント発揮した、どこにもスキなしの騎乗だった。
「前走で乗っていた馬が4頭もいたため緊張した(ルメール騎手)」とはいうが、3着アドマイヤテラも、最後に2着に突っ込んできたヘデントール(父ルーラーシップ)も、十分に見せ場を作って7着のシュバルツクーゲル(父キズナ)も前走騎乗していたライバル。上位に来た3頭の現在の能力を把握していた強みは大きかった。
アーバンシックの3代母はウインドインハーヘア。配合形はサンデーサイレンスの「3×4」。距離3000mに対する不安はきわめて少なかった。
1番人気のダノンデサイルは、好スタートから好位のイン追走。途中で下がり気味になったのは動く馬が多かったからと見えたが、そうではなく自身が苦しかったのだろう。後方にまで下がった3コーナー過ぎでは、尾を振ってスパートを嫌がっていた。全体に大きくなって日本ダービーよりプラス18キロ増の馬体はたくましくなったと同時に、初の長距離3000mに対応するには立派すぎたのかもしれない。
3コーナー過ぎの様子だと、大凡走もありそうだった。しかし、最後の直線で外に回るともう上位はムリの状況ながら、懸命にフットワークを伸ばして上がり「35秒5」。勝ち馬に0秒7の遅れは取ったが、上がり3ハロンは勝ち馬を上回っていた。体調もう一歩に加え、次つぎに外から来られる難しい流れに若さを見せてしまったが、もちろんこれが能力ではないことは衆目一致。アーバンシック、急上昇したヘデントール、アドマイヤテラ、好走したショウナンラプンタ、ビザンチンドリームなどとともに、今後のビッグレースの主役になってほしい。
これで最近10年の菊花賞馬は「日本ダービー出走馬6頭・不出走馬4頭」。また、直前のステップは「セントライト記念組4頭・神戸新聞杯組4頭・そのほか2頭」となった。