勝負の明暗を分けたのは仕掛けるタイミング
毎日王冠を制したシックスペンス(撮影:下野雄規)
3歳牡馬シックスペンス(父キズナ)が、1着から10着まで0秒5差のまるでハンデ戦のような大接戦を切り抜けてGII毎日王冠を制した。最近6年間で3歳馬が毎日王冠を勝ったのは5頭に達する。
2019年の勝ち馬ダノンキングリーは、次走マイルCSを選び2番人気で5着だった。2020年のサリオスも次走はマイルCSに出走し、2番人気で5着。2021年のシュネルマイスターが選んだのもマイルCSで、2番人気で2着。昨年2023年のエルトンバローズもマイルCSに挑戦して、4番人気で4着だった。簡単には勝てない。
それ以前、2018年の4歳牝馬アエロリットも、次走はマイルCSを選び2番人気で12着だが、2017年の5歳リアルスティールは天皇賞(秋)に出走して3番人気で4着。2016年の4歳牝馬ルージュバックは、天皇賞(秋)に挑んで3番人気で7着。
2015年のエイシンヒカリは、天皇賞(秋)を2番人気で9着。2014年のエアソミュールは別路線を選んだが、2013年エイシンフラッシュ、2012年カレンブラックヒル、2011年ダークシャドウ、2010年の3歳牡馬アリゼオ、2009年カンパニーの次走も天皇賞(秋)。
レース間隔、距離適性、レース経験、強敵のレベル…などが関係するが、毎日王冠の立ち位置は3歳馬の快走が増えたのと連動するように、大きく変化している。だが近年、毎日王冠→マイルCS(秋の天皇賞)の連勝馬はいない。
今年の勝ち馬シックスペンスは、今回がまだ5戦目。全4勝は1800m以下。国枝調教師も、C.ルメール騎手もこの馬の適距離は「1600m-2000m」と分析している。まだどちらのGIを選ぶかは明らかではないが、ビッグレースの出走予定馬を数多くかかえるノーザンファームの生産馬で、所有はキャロットクラブ。C.ルメール騎手とは3戦3勝なので、鞍上チェンジの可能性は薄い。マイルCSか、天皇賞(秋)か、現在は両にらみだが果たしてどちらになるのだろう。
シックスペンスの母フィンレイズラッキーチャームの父方祖父キャンディライドは、その母の父キャンディストライプスが1996年の毎日王冠をステップに天皇賞(秋)を勝ったバブルガムフェローの半兄になる。レース運びからは2000mでも大丈夫と思えた。
レースの流れは「前半800m47秒5-(11秒9)-後半45秒7-33秒7」=1分45秒1。高速レースとすると1000m通過59秒4は明らかなスローだった。そのため大接戦に持ち込まれ最後の直線は「11秒3-11秒0-11秒4」。4コーナーで先頭集団に位置した馬だけが上位5着までを独占する結果ではあったが、どのタイミングで、どこで秘める爆発力を繰り出すかの勝負だった。
シックスペンスは残り2ハロンから追い出したが、鞍上のC.ルメール騎手は、必死で追っているように見せながら、最終2ハロン推定は「10秒9-11秒1」。前にいたホウオウビスケッツ(父マインドユアビスケッツ)、エルトンバローズ(父ディープブリランテ)を最後の1ハロンで捕まえることができるのを確信していたかのような並びかけ方で、上がり3ハロンは33秒3の数字はで他馬とほとんど同じでも、切れ味を爆発させるタイミングが抜群だった。
脚を余したかのように映ったダノンエアズロック(父モーリス)の上がりも33秒3。他馬と攻め合いになったマークがきつく、前があかなかった。失速したかのように見えたローシャムパーク(父ハービンジャー)の上がりも33秒3。こちらは4コーナーの位置が少し悪く、なし崩しの上がり33秒3になってしまった。上がりの数字は全馬が33秒台になり、置かれていた馬は小差でも完敗はやむを得ないが、勝負どころの微妙な脚の使い方が明暗を分けた印象が残った。