確かな成長を感じた一戦

　例年より出走馬全体のレベルにちょっと疑問があり、今年は出走馬14頭のうち11頭までが2勝クラス以下の組み合わせ。結果もそれを反映するように、「皐月賞、日本ダービー」に出走していた3頭が上位を独占し、着順は「2、1、3、4、5、6」番人気の決着。もう一歩で上位6頭が人気通りの着順の珍しい結果になるところだった。

　レース全体のバランスは前後半1000m「60秒5-(12秒2)-58秒9」＝2分11秒6。途中から気負ったヤマニンアドホック(父ノヴェリスト)が主導権を握った流れはきびしいものではなく、また、途中で動きをみせる馬も少ない。3コーナー過ぎからコスモキュランダ(父アルアイン)が予測された通りに外を回って早めにスパートしたのが印象的だっただけで、波乱をもたらすような展開ではなかった。

　勝ったアーバンシック(父スワーヴリチャード)は終始流れに乗って中位のイン。勝負どころからコスモキュランダが例によってまくり気味にスパートするのを待つかのような位置取りだった。外からコスモキュランダが動くのは承知、それを待ってコースロスのないインから一気のスパートを決める快勝だった。

　コスモキュランダは上がり「34秒2」でまとめて、ほぼ能力を出し切っているから、巧みなコース取りでこれをかわしたアーバンシックの計算通りだった切れ味だけが光った。流れに乗ってひと呼吸待つことができたアーバンシックは、まだ出走は未定だが、流れの落ち着く菊花賞でも同じようなレースが可能だろう。

　スワーヴリチャード産駒で、母の父ハービンジャー。祖母の父はダンスインザダーク。

　3歳になったスワーヴリチャード産駒はちょっと伸び悩む傾向があるのではないかと思わせるところがあったが、牝系の3代母はウインドインハーヘア。前日「ローズS」に出走した同血馬レガレイラは、ちょっと物足りない秋華賞に向けての試走に徹したようなレースだったが、精神面でも成長して自在のレースができたアーバンシックに距離延長に対する死角は少ないように思える。今週22日の「神戸新聞杯」の結果を待たなければならないが、神戸新聞杯もそれほどメンバーが揃っているわけではない。

　仮にC.ルメール騎手の連続騎乗が叶うようなら、成長したアーバンシックは菊花賞でも有力候補の1頭になるだろう。

　2着コスモキュランダは、途中から流れに乗れた皐月賞で見せた自在性はあるはずだが、レース運びだけでなく、スタミナ能力にも心配がある印象を与えてしまった。ただし、強気な挑戦者として菊花賞に向かう。

　3着エコロヴァルツ(父ブラックタイド)は、先手を主張しなくても大丈夫なところを見せたが、前半1200m通過1分14秒8のスローで行けた日本ダービーで失速。今回もレース上がり34秒6に見劣る35秒0。スタミナタイプではない心配が生じた。