スマートフォン版へ

【京成杯AH】2歳女王アスコリピチェーノが春の鬱憤晴らし古馬相手に完勝

  • 2024年09月09日(月) 18時00分

世界相手への挑戦に期待


重賞レース回顧

京成杯AHを制したアスコリピチェーノ(撮影:下野雄規)


 前日7日の「紫苑S」芝2000mで従来の記録が0秒5も更新される1分56秒6のコースレコードが飛び出し、8日は2歳の新馬芝1600mで「1分32秒8」の2歳コースレコードが更新されるなど、超高速の芝コンディションでスタートした秋の中山。

 快速重賞の「京成杯AH」1600mも、レース史上3位「1分30秒8」の決着だった。予測されたエエヤン、セルバーグなどが飛ばす展開ではなかったため、レース全体のバランスは「前半45秒6-(1000m57秒3)-後半45秒2」=1分30秒8(レース上がり33秒5)。前後半バランスとすると必ずしも超ハイペースではなかった。これを中団の外で楽々と追走し、直線一気に差し切ったアスコリピチェーノ(父ダイワメジャー)の爆発力、マイル戦のスピード能力は素晴らしかった。

 レースの最終1ハロンは「10秒9」。アスコリピチェーノは残り200m標識ではまだ先頭ではなかったので、最終1ハロンは推定「10秒7」に達する。1600mを1分30秒8で乗り切って、最後は10秒7などという記録はまずありえない。2019年にトロワゼトワルが1分30秒3のJRAレコードで逃げ切った時の最終1ハロンは「12秒0」であり、2012年にレオアクティブが1分30秒7で差し切った際のレースの最終1ハロンは「11秒8」だった記録がある。

 C.ルメール騎手がそのずば抜けたマイル適性を絶賛するアスコリピチェーノは、これでマイル戦【3-2-0-0】。桜花賞、NHKマイルCでは2着に負けているが、ともに能力を100%発揮できたとはいえない内容だった。ひと回り成長した今回がアスコリピチェーノの全容に近いのだろう。黒岩調教師は「今後はオーストラリアのゴールデンイーグル(11月2日、芝1500m、オオバンブルマイが勝った賞金約5億円のレース)を念頭に調整したい」としている。

 今回は牝馬ながら55.5キロのトップハンデにも近い負担重量をこなしての完勝だった。国内のGIという手もあるが、よりレベルの高い相手が揃って不思議ないビッグレースへの挑戦を楽しみにしたい。アスコリピチェーノはタフなマイラーを数多く送った種牡馬ダイワメジャーが19歳時の2020年の交配で生まれた産駒。

 ディープインパクト、オグリキャップ、シンボリルドルフ…など、その父が晩年に近くなったときに本当の大物として送った産駒は珍しくないといわれる。ダイワメジャーもそんな種牡馬なのかもしれない。

 2着に突っ込んだタイムトゥヘヴン(父ロードカナロア)は確かに中間の動きが光っていた。よほどデキが良かったのだろう。2022年のダービー卿CTを1分32秒3で快勝した伏兵だったが、ここまで16戦連続して連対なし。6歳のイメージ以上にベテランの印象が強く、外枠も不安視される死角だった。2006年の桜花賞馬だった母キストゥヘヴンも、そのあと16連敗しながら、2008年の京成杯AHを勝っている。

 一旦は2着確保かと映ったサンライズロナウド(父ハービンジャー)が惜しい3着。高速馬場を考慮して、今回は一転して好位追走。他馬が仕掛けてきた4️コーナー手前で息を入れる横山典弘騎手らしい絶妙の騎乗で、この馬場なので自身の最高時計を1秒5も短縮したが及ばなかった。

 2番人気のディオ(父リオンディーズ)はかなり悔いの残る6着。直線に向いて手応え十分だったが、馬群に詰まって外に出せないシーンが2回も重なった。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング