プログノーシスの巻き返しに期待
札幌記念を制したノースブリッジ(撮影:高橋正和)
今年は6歳馬がGIIになって以降、断然最多の7頭も出走し、出走馬(実質11頭)の過半数を占める組み合わせだった。上位5着までのうち4頭が6歳馬だった。
この結果が秋のビッグレースに強く結びつくかどうか懐疑的な見解もあるが、久しぶりの重賞制覇を果たした6歳牡馬ノースブリッジ(父モーリス)は、今春の海外遠征を2回も経験したタフなタイプ。重賞勝利は2022年のエプソムC、2023年のAJCCに続いて3勝目となった。
「グラスワンダー、スクリーンヒーロー、モーリス…」と連続するサイアーラインは、すでに4世代目のピクシーナイト、Hitotsu(AUS)が種牡馬となっている。これに現6歳のジャックドール、ノースブリッジ…などが加わる可能性が生じたので、現代の日本でもっともタフに連続するサイアーとしてさらに発展するかもしれない。
ノースブリッジは、抜群の切れ味に勝るとか、スピード能力で圧倒する軽快なレースを展開するタイプではないが、これで全7勝が距離「1800-2200m」に集中。とくに今回制した2000mはこれで【5-0-1-4】。中距離タイプの典型となった。
伏兵の6歳アウスヴァール(父ノヴェリスト)の先導したレース全体の流れは、最初の4ハロンを「48秒7」のスローで展開したあと、残る6ハロンのラップはまるで精密機器が刻んだかのような一定ペースで、「11秒8-11秒7-11秒9-11秒9-11秒7-11秒9」=1分10秒9。これを2番手から抜け出したノースブリッジには、理想の平均ペースだった。ノースブリッジとのコンビで6勝目を記録したベテラン岩田康誠騎手は「きょうは初めて完ぺきに近いレースができた。昨年までのノースブリッジと違うところをこの秋に見せられたら…」。今後の期待が大きくふくらむコメントだった。
2着した5歳ジオグリフ(父ドレフォン)は、2022年の皐月賞快勝のあと、ダート戦に活路を求めるなど試行錯誤の期間が続いたが、5歳の今年はスランプ脱出中。とくに今回の気力満点の中間の力強い動きは光っていた。ノースブリッジには完敗だったが、次走以降につながるレース内容だったといえる。札幌2歳Sを史上3位タイの「1分49秒1」で圧勝している同馬に、洋芝の札幌コースはベストに近かった。
3着ステラヴェローチェ(父バゴ)も中間の気配の良さを発揮しての善戦。屈腱炎で1年7カ月もの休養があった馬なので、これからも脚元の様子を見ながらの出走になるが、脚元の不安さえ出なければ種牡馬バゴの産駒はクロノジェネシスを筆頭にきわめてタフ。戦歴は少ないだけに、これからも活躍の場は十分にある。
残念だったのは、断然の1番人気で4着にとどまったプログノーシス(父ディープインパクト)。今春2戦の素晴らしい内容から札幌記念2連覇可能と思えたが、スタートの不安が解消することなく、かなり暴れて出負けの不利。香港で見せたような道中の進出もかなわず、期待外れの凡走に終わってしまった。まだ戦歴15戦だけ。レース直後だけに明確な敗因は不明だが、馬体は十分に若い。巻き返しに期待したい。
巻き返しを期待された6歳シャフリヤール(父ディープインパクト)も非常に残念な5着に終わってしまった。プログノーシスも、シャフリヤールも、馬場や、距離、体調に大きな死角があったわけではなく、今回の相手で崩れるような力関係ではないので生じた不安はかえって大きい。今後の動向に注目したい。