展開が向かず敗れた馬も巻き返しに期待
関屋記念を制したトゥードジボン(撮影:下野雄規)
快速マイル重賞の「関屋記念」は最後の直線が659mもあるので、流れが落ち着くケースが非常に多い。外回りなので、4コーナーからは直線1000mのコースと合流する。そこで、ときにはまるで「直線659m」のレースだった、と回顧されたりする。
ウインカーネリアン(2番手)=シュリ(逃げ)の先行馬同士で決着した2022年は前後半の800mに3秒5も差があるスローペースで「48秒4-(1000m通過60秒3)-44秒9」=1分33秒3。上がり3ハロンは「10秒8-10秒6-11秒6」=33秒0だった。
今年もほとんど似たようなスローバランスが展開された。主導権を握って完勝したトゥードジボン(父イスラボニータ)の前後半800mには2秒5も差があるスローで「47秒7-(1000m通過59秒6)-45秒2」=1分32秒9。後半3ハロンは「11秒2-10秒9-11秒2」=33秒3だった。
当然、連対馬以外には、もう少し積極策を取ればよかったのに…という見方が生じるが、自分の形を崩しては正解ではないケースが多く、ましてみんなあまり慣れない新潟コースのワンターンで、最後の直線が659mも続いている。
例えば、1番人気で0秒3差の3着に突っ込んだジュンブロッサム(父ワールドエース)は、自身の最高上がり3ハロン記録と0秒1差の「32秒5」で猛然と伸びて勝ち負けに持ち込んでいる。上がりが速くなりすぎて届かなかったが、持ち味は発揮したといえる。
同じように最後方近くにいた伏兵11番人気のサンライズロナウド(父ハービンジャー)は、得意の新潟で直線一気に徹した結果、自己最高の上がり34秒0を実に1秒5も更新する「32秒5」の切れを爆発させ、0秒4差の6着に突っ込んでいた。
さすがに来年の関屋記念が今年のような特殊なペースに陥るとは思えないが、新潟のマイル戦にはこういうアンバランスなペースのレースは何度も、何回も繰り返されている。ぜひとも馬券作戦に役立てたい。
早めに動いて2着だったディオ(父リオンディーズ)は、トゥードジボンが1分31秒5の快時計で逃げ切った前走の米子S1600mで、勝ち馬を0秒3差まで追い詰めた2着馬。
ディオは、新潟は初コース、鞍上はテン乗り。そのため人気薄だったが早め早めに動いて初めて重賞で連対。価値ある賞金加算に成功した。
2番人気で5着にとどまったプレサージュリフト(父ハービンジャー)は、東京のマイル戦に1分31秒9の小差3着があり、コースにも距離にも死角はないと思えた。ただ、直線で外から猛追してきたジュンブロッサムに差され、サンライズロナウドにも並ばれたあたり、切れる牝馬だが、追い込んできた2頭の上がりは32秒5。プレサージュリフト自身のベストの上がりはここまで「33秒0-33秒2」。極端に上がりの速い爆発力勝負は合わなかったのかもしれない。
3歳ロジリオン(父リオンディーズ)の0秒4差4着は惜しかった。どの馬も失速していない流れなので、最後の200mあたりで少し前が詰まった不利が大きかった。
同じ3歳の4番人気馬ディスペランツァ(父ルーラーシップ)は、M.デムーロ騎手も残念がったように、ダッシュが利く馬ではないので内枠は明らかに不利。スムーズな追走ではなかった。新潟のマイル戦は向正面の直線が3ハロン以上あるので、寄られたり、前半から競り合う形が避けられない多頭数の内枠は有利ではない。今年を含めた最近10年、3着以内の30頭中、18頭の馬番が2ケタである。
札幌のメインはプルパレイ(父イスラボニータ)が勝ち、中京のメインはコスタボニータ(父イスラボニータ)が2着し、新潟メインはトゥードジボン(父イスラボニータ)が快勝。他にも決してランキング上位ではない種牡馬イスラボニータの産駒が快走する非常に珍しい日曜日だった。