2着ボンドガールも成長を見せた
クイーンSを制したコガネノソラ(撮影:山中博喜)
2000年から3歳馬以上の夏の牝馬重賞となって、好走馬の中に2000年トゥザヴィクトリー(のちにドバイワールドC2着)、2003年ファインモーション(前年のエリザベス女王杯馬)、2005年ヘヴンリーロマンス(秋の天皇賞制覇)、2011年アヴェンチュラ(秋華賞馬)、2017年アエロリット(安田記念2着)、2018年ディアドラ(英G1制覇)、ソウルスターリング(オークス馬)…などが含まれ、多くの名牝の夏のスケジュールに組み入れられてきた「クイーンS」。
今年は雨上がりの稍重の芝で、勝ち時計の1分47秒4こそ目立たなかったが、1着馬から10着馬まで「0秒5差」の大接戦。さらに上位5着馬までを、史上初めて若い「3歳、4歳馬」が独占する結果となり、いつもの年以上に秋の展望が広がることになった。
勝った3歳コガネノソラは、父ゴールドシップ(その母の父メジロマックイーン)ゆずりの芦毛馬。2017年に快勝したアエロリット(父クロフネ)以来、古馬混合重賞となってからは2頭目の芦毛の勝ち馬であり、2歳時は430キロ台だった馬体が、今回は初めて450キロ台に成長していた。母マイネヒメルの半妹ウインマリリン(父スクリーンヒーロー)は、古馬になり日経賞、オールカマー、G1香港ヴァーズなど22戦6勝のタフな名牝だった。3連勝で挑戦した春のオークスはキャリア不足もあって12着(1秒2差)にとどまったが、きわめてタフだったゴールドシップ産駒らしく、これからさらに成長する牝馬に育ってくれるはずだ。
2着に突っ込んだのも3歳ボンドガール(父ダイワメジャー)。素質馬揃いだった2歳6月の新馬戦のあと、勝ち切れてはいないが通算【1-3-0-1】。2着はすべて重賞レースであり、今回は古馬相手に上がり最速の34秒4でアタマ差まで伸びてきたからその中身は濃い。同馬も少したくましくなって馬体重は自己最高の458キロ。差す形を身につけて、不安のあった距離延長に対応できたのは大きい。上の現5歳牡馬ダノンベルーガ(父ハーツクライ)は、やや勝ちみに遅いが、3歳秋以降、GIで掲示板確保が5回もあるめったに崩れないタイプ。ボンドガールもまず凡走しない馬に成長しそうだ。
3勝クラスを勝ったばかりの上がり馬4歳アルジーヌ(父ロードカナロア)は惜しい3着。2014年にこのクイーンSをレコード勝ちした母キャトルフィーユに続くことはできなかったが、母の勝利は5歳夏の20戦目のこと。今回は昇級初戦、3コーナー過ぎでちょっと置かれたのが痛かった。ベストの芝1800m【3-1-1-0】前後なら、オープンでも十分に通用する。
1番人気で10着にとどまったウンブライル(父ロードカナロア)は、今回が初めての1800m。ただし、距離が合わなかったというより、レース後にC.ルメール騎手が振り返った「コースが合わなかった。ビュッと反応できないので、広いワンターンのコースの方がいい」とする敗因があった。
3番人気で0秒1差の4歳ドゥアイズ(父ルーラーシップ)は、大接戦になって外を回されたロスが痛かった。ここまでは良績のある札幌コース【1-2-0-0】だったが、直線で「逆手前になったのが残念だった(鮫島克駿騎手)」という敗因も重なった。
「アイビスSD」は、ありがちな外枠の馬が上位6着までを占める結果になった。もちろん、勝ったモズメイメイ(父リアルインパクト)も馬場の外寄りを進んだが、終盤は外にこだわることなく、勝負どころから密集馬群を避けるように馬場の中央に進路を取った国分恭介騎手の好騎乗が光った。1番人気のチェイスザドリーム(父ロードカナロア)は、とくに余裕残りの馬体とは映らなかったが、短い期間で5歳牝馬の20キロ増は陣営にとってもちょっと誤算だったか。