秋には大舞台を目標に
函館記念を制したホウオウビスケッツ(撮影:山中博喜)
前日の「函館2歳S」を史上初めて北海道以外でデビューした2歳牡馬サトノカルナバル(父キタサンブラック)が快勝した。日曜日には2005年のエリモハリアー(父ジェネラス、函館記念3連覇)以来、なんと19年ぶりにホウオウビスケッツ(父マインドユアビスケッツ)が「巴賞→函館記念」の連勝を達成した。
サトノカルナバルの佐々木大輔騎手(20)は重賞初勝利。ホウオウビスケッツの父マインドユアビスケッツも、JRAの芝重賞制覇は初めてだった。
とくに4歳牡馬ホウオウビスケッツは、巴賞も函館記念も圧勝に近い好内容だから、この秋が楽しみになった。まだ未定だが、奥村武調教師は「天皇賞(秋)が目標になる」と展望している。3番人気にとどまったのは、中1週になる巴賞の好走馬があまりに長いこと連敗を続けていたからだった。
父マインドユアビスケッツ(USA)の競走成績[8-10-3-4]はすべてダートだが、勝ち星は6Fから9Fまで守備範囲は広い。その3代父Deputy Minister デピュティミニスターにさかのぼる種牡馬もダート戦中心だが、この父系の輸入種牡馬フレンチデピュティは日本ではクロフネ、アドマイヤジュピタ、エイシンデピュティ、レジネッタなど、芝をこなすGI馬を送った。また、母ホウオウサブリナ(父ルーラーシップ)は、キングカメハメハの母として知られるマンファス(父ラストタイクーン)の「3×2」であり、祖母トラヴェシーアはディープインパクト産駒でもある。
ホウオウビスケッツは浅い戦績で挑戦した3歳春のクラシックは日本ダービー6着(0秒2差)が光る程度だったが、4歳の今年は【2-0-2-0】。洋芝の函館で開花したわけでもなく、東京新聞杯1600mは1分32秒3で乗り切っている。
開催最終日だが芝コンディションは悪くなく(前日の函館2歳Sの1分09秒2はレースレコードタイ)、ハナを切って3着に粘り込み、波乱の伝統を守った14番人気の伏兵アウスヴァール(父ノヴェリスト)の先導したレース全体の流れは「59秒6-59秒6」=1分59秒2。測ったような平均ペースそのものだった。
4番人気で2着に押し上げたグランディア(父ハービンジャー)は、終始コースロスを避けて中位のインを追走。勝ち馬との3馬身半の差は詰まらなかったが、上がり35秒3は同じだった。全兄になるセン馬サンマルティンは2017年の小倉記念2着馬。同じくバルデスは2017年の松前特別の勝ち馬。同じくセン馬ドレッドノータスは2019年の函館記念の4着馬。このディアデラノビア一族は夏の平坦に近いコースが合っている。
1番人気のサヴォーナ(父キズナ)は、距離が短いわけではないが、最近はずっと長丁場専門のためか、内枠でダッシュ一歩。最初から平均ペースの流れに乗れなかった。最後の直線は外から差を詰めたが、このコースでレース上がりが35秒台になっては苦しい。
2番人気のトップナイフ(父デクラレーションオブウォー)は、入念な乗り込みで好仕上がりに映った。前半は勝ち馬をマークする位置で行きっぷりも悪くなかったが、直線に向いて手応えを失うと、膝の故障の長期休養明けだけにもうムリをすることはできなかった。無事で反動がなければ、巻き返せるはずだ。
巴賞2着のデビットバローズ(父ロードカナロア)は、勝ったホウオウビスケッツとは明暗が分かれ、総じて巴賞好走馬の函館記念での成績不振を示すような結果になってしまった。間隔を空けながら出走してきた馬だけに、つらかったのかもしれない。
好位追走のオニャンコポン(父エイシンフラッシュ)も直線失速。タフなタイプと思えたが、2月から連戦の6戦目。少々スケジュールが厳しかったか。