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サトノレーヴの血統背景は“近年最高のニックス” 「歴代最強スプリンター」を掛け合わせた配合について深堀り

  • 2024年06月10日(月) 18時00分

血統で振り返る函館スプリントS


【Pick Up】サトノレーヴ:1着

 短距離重賞を3勝したハクサンムーンの半弟。父がロードカナロアなので、強いスプリンターを作りたい、という生産者の意図が見える配合です。その狙いは成功しました。

 父ロードカナロアと、母の父サクラバクシンオーは、いずれもわが国における歴代最強クラスのスプリンター。種牡馬としても成功しました。芝1200mに限った勝利数ランキングを調べると、サクラバクシンオーは10回(05〜11年、13〜15年)、ロードカナロアは5回(19〜23年)首位に立っています。

 この2頭の組み合わせは、近年最高のニックスのひとつといえるでしょう。サトノレーヴのほかに、ファストフォース(高松宮記念、CBC賞)、テイエムトッキュウ(カペラS)、キルロード(高松宮記念-3着)、サンキューユウガ(CBC賞-2着)、キープカルム(京都新聞杯-5着)などが出ています。連対率34.4%、1走あたりの賞金額449万円は驚異的です(ロードカナロア産駒全体の数値は連対率19.8%、1走あたり231万円)。ちなみに、昨年の優勝馬キミワクイーンは、「父ロードカナロア、2代母の父サクラバクシンオー」なので、やはりこの組み合わせを持っています。

「母の父サクラバクシンオー」は、活躍馬が牡馬に偏る傾向があり、「ロードカナロア×サクラバクシンオー」の組み合わせも同様です。また、スプリンターだけでなく、キタサンブラックのような中長距離向きの超大物も出しており、今後、キタサンブラックとその息子イクイノックスが種牡馬として存在感を増していくはずなので、サクラバクシンオーの血統的な重要性はさらに大きくなるでしょう。

血統で振り返るエプソムC


【Pick Up】レーベンスティール:1着

 先週はリアルスティール産駒が4勝と好調。総合種牡馬ランキングで18位に上昇してきました。フォーエバーヤングが稼いだ海外分の賞金(UAEダービー、サウジダービー、ケンタッキーダービー-3着)は算入されていないので、本来であればもっと上位にいる種牡馬です。

 芝とダート、どちらも走れるのが特長で、これは同じニックス(ディープインパクト×ストームキャット)から誕生したキズナと似た傾向です。

 母トウカイライフは「トウカイテイオー×リアルシャダイ」というニックス(トウカイポイント、チタニックオー、アースシンボル、トウカイオスカー、トウカイアローなどが出る)から誕生しています。繋ぎがゆるいトウカイテイオーと、硬く立っているリアルシャダイがうまくフィットするのか優秀な成績です。この組み合わせの繁殖牝馬も成功しており、レーベンスティールのほかにブレイブスマッシュ、オツウなどが出ています。

 母の父トウカイテイオーは皐月賞と日本ダービーの二冠のほか、ジャパンC、有馬記念などを制覇しました。その父シンボリルドルフは無敗で三冠を達成し、合計7つのGIを制覇しました。サンデーサイレンス導入以前にわが国で活躍した名馬の血が、埋もれることなく血を繋いでいるのは素晴らしいと思います。

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【サクラバクシンオー】

 母サクラハゴロモはアンバーシャダイ(天皇賞(春)、有馬記念)の全妹なので、血統的に生粋のスプリンターというわけではないのですが、抜きんでた天性のスピードを誇り、スプリンターズSを連覇するなど1400m以下では12戦11勝。芝1400mで1分20秒の壁を破った日本初の馬でもあります。その父サクラユタカオーは芝1800mと2000mの日本レコードを樹立した中距離向きのスピード馬で、2代父テスコボーイはトウショウボーイ、テスコガビーなどの父で、1970年代の日本競馬にスピード革命をもたらしました。

 種牡馬としても大成功し、JRA通算1435勝は歴代9位。2010年に芝1200mで歴代ナンバーワンとなる年間53勝を挙げました。今後も破ることは難しいと思われる大記録です。

 ショウナンカンプ、グランプリボス、ビッグアーサー、シーイズトウショウ、ベルカント、カノヤザクラなど多くの活躍馬が出ており、サイアーラインはビッグアーサーを通じて発展の兆しがあります。キタサンブラックの母の父、ピクシーナイトの2代母の父でもあります。

 函館スプリントSは、1着サトノレーヴの母の父、3着ビッグシーザーの2代父がサクラバクシンオーで、2着ウイングレイテストの母の父がサクラユタカオー。上位3頭はすべてテスコボーイの血を抱えていました。

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「JRA2歳種牡馬ランキング1位のナダルについて教えて」

 ここまで4頭出走して2勝、2着1回、着外1回。キズナとサートゥルナーリアを抑えて賞金ランキングのトップに立っています。

 現役時代はアメリカで走り、ダート9ハロンのG1アーカンソーダービーなど4戦全勝。スタミナと底力に優れた血統構成で、豊富な筋肉量に恵まれたアメリカンタイプの大型種牡馬ですから、ダートでは相当やれるだろうという見方はあったのですが、芝でこれだけやれるのは嬉しい誤算です。優れたスピードを内包しているので芝向きの仔を出せるのでしょう。

 勝った2頭、ヒデノブルースカイとポートデラメールは、いずれも母の父がディープインパクト。馬格の乏しい繁殖牝馬に、雄大な馬格を誇るナダルを交配する、という意図を持った配合が少なからずあり、小柄なディープ牝馬がナダルのもとにたくさん集まりました。母の芝適性が産駒に伝わっている部分もあるかと思います。

 本質的にはパワー型で、芝では瞬発力勝負よりもスピードの持続力を活かしたレーススタイルが合うでしょう。芝で凡走した馬のダート替わりは買い。秋から冬にかけて、ダートの番組が増えてくるとさらに成績は向上しそうです。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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