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“日本ダービー史上最も極端な後傾ラップ”にフィットしたダノンデサイルの血統構成を深堀り

  • 2024年05月27日(月) 18時00分

血統で振り返る日本ダービー


【Pick Up】ダノンデサイル:1着

 ラスト5ハロン「56秒8」は日本ダービー史上最速。最初の5ハロンが「62秒2」という超スローペースだったので、その差5秒4という極端な後傾ラップとなりました。勝ったダノンデサイルは、日本ダービー史上例を見ない特殊な流れのなかで、逃げ馬の直後で距離ロスなく脚を溜めれたのが最大の勝因でしょう。

 父エピファネイアは、前週のオークスで1番人気ステレンボッシュが2着と敗れていましたが、1週間遅れでビッグタイトルを手にしました。自身は2013年の日本ダービー2着馬で、このときの1着馬はキズナ。今回、キズナ産駒のジャスティンミラノをくだして産駒が日本ダービー初制覇を果たしました。

 母の父コングラッツはエーピーインディ系。現3歳のダート最強馬フォーエバーヤングの母の父でもあります。現3歳7906頭のなかで「母の父コングラッツ」はわずか11頭しかいないにもかかわらず、芝とダート双方の超大物を出したのは特筆すべきことです。

 母トップデサイルはアメリカ産馬。現役時代に米G1・BCジュベナイルフィリーズで2着となりました。社台ファームが輸入し、ここまで3頭の仔がデビューを果たしていますが、ダノンデサイルを含めてすべて2勝以上を挙げています。競走馬としても繁殖牝馬としても優秀です。

 エーピーインディ系はスピードの持続力に強みがあります。ラスト5ハロン「57秒0」という史上2番目のタイムだった2021年の優勝馬シャフリヤールも、ダノンデサイルと同じく母の父がエーピーインディ系(エッセンスオブドバイ)でした。レース終盤に速いラップが5ハロン続く特殊な流れに、エーピーインディ系の血がうまくフィットした可能性はあると思います。

血統で振り返る葵S


【Pick Up】ピューロマジック:1着

 父アジアエクスプレスは現役時代、朝日杯FSとレパードSを勝ちました。芝・ダートどちらでも走れるタイプでしたが、産駒の傾向を見ると圧倒的にダート向き。通算111勝のうちダートが98勝で、芝ではわずか13勝しか挙げていません。JRAの重賞初制覇が芝というのは意外でした。

 芝をこなしたのは母方の血の影響です。母メジェルダはディープインパクトの娘で、現役時代にファンタジーSで2着と健闘しました。ピューロマジックの全兄メディーヴァルは芝1000mのオープン韋駄天Sの勝ち馬で、マジェスティックウォリアーを父に持つ半兄バグラダスはGI朝日杯FSで5着と健闘しています。ダート向きの種牡馬と交配しても芝向きの産駒を出すところが母メジェルダの非凡なところです。

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【コングラッツ】

 現役時代は米G1を勝てず、G2止まりの競走馬でしたが、種牡馬として成功し、米GIを4勝したタービュレントディセントをはじめ多くの重賞勝ち馬を出しました。牝馬の活躍馬が多く、母の父としても成功しています。

 JRAにおける母の父の成績は、芝15勝、ダート12勝という成績で、連対率も芝23.7%、ダート16.9%と、芝がダートを上回っています。ダービー馬ダノンデサイル、ダート王フォーエバーヤング、GII時代のホープフルSを勝ったハートレーなどが出ています。エーピーインディ系は、シニスターミニスター、パイロ、マジェスティックウォリアーなどダート巧者が多いのですが、コングラッツはそれらに比べると芝寄りの血です。

 海外でも、母の父として名牝シーデアズザデビル(ケンタッキーオークス、ラトロワンヌS、クレメントL.ハーシュS)、キャラヴェル(BCターフスプリント、ジャイプールS)などのG1ホースを出しています。前者の母スターシップワープスピードは「コングラッツ×フォレストリー」なのでダノンデサイルの母トップデサイルと同じ。また、後者の母ジージーズームズームは、「父コングラッツ、2代母の父ダイナフォーマー」なので、これもまたトップデサイルと同じです。

血統に関する疑問にズバリ回答!


「英ダービーの血統的注目馬は?」

 今週末、6月1日(土)に英ダービーが行われます。今年で245回目。昨年、ディープインパクト産駒のオーギュストロダンがヘイロー系初の優勝馬となりましたが、今年はシティーオブトロイがストームキャット系初の制覇を狙います。

 世界的に大きな勢力を誇るこの系統は、とくにアメリカを中心に繁栄していますが、イギリスやアイルランドでは短距離が中心で、まだ英ダービー馬は出ていません。仏ダービーはシャマーダルとロペデヴェガが親仔制覇を成し遂げています。

 シティーオブトロイは、1番人気に推された英2000ギニーで9着と大敗。しかし、ブックメーカーは英ダービーの前売りオッズで依然1番人気に推しています。昨年、同じエイダン・オブライエン厩舎のオーギュストロダンは英2000ギニー12着のあと英ダービーを制覇しました。その再現があると見ているのかもしれません。

 父ジャスティファイは無敗の米三冠馬で、父系はスキャットダディ→ヨハネスブルグ→ヘネシー→ストームキャットとさかのぼります。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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